矯正治療におけるIPRについて
皆さん、こんにちは
今日は矯正治療で行う処置の一つ、IPRについてお話していきます
IPRとは・・・
「Interproximal (Enamel) Reduction 」のことで、他にもDisking ディスキング、Stripping ストリッピングなどの呼び方があります
昔から矯正治療において一般的に行われている処置で、スペースが必要な際、歯と歯の間にヤスリをかけて歯の大きさを小さくしスペースを獲得する方法です
歯を小さくする処置、歯を削る、、、というと、何だかたくさん削られるような、痛そうなイメージを持ってしまいがちですが、実は全く違います!!
ですので、安心して是非続きを読んでくださいね*
まずは処置の目的からお話していきます
IPRの目的
1) 歯を並べるための隙間を作る
2) 上下左右の歯のサイズバランスを整える
3) ブラックトライアングルの解消
1) 歯を並べるための隙間を作る
歯は大きさにあった適切な隙間がないと凸凹、ガタガタになってしまいます。そのため、矯正治療をする際には歯が綺麗に並ぶためのスペースを何らかの方法で獲得しなければなりません。歯列を前後または左右側へ拡大したり抜歯をしたりして、そのスペースを獲得していきますが、それらの方法に加えてスペースが必要な場合に、IPRを行ってスペースを獲得していきます。
2) 上下左右の歯のサイズバランスを整える
私たちの顔が完全に左右対称でないのと同じように、私たちの左右の歯の大きさも完全に対称ではありません。もちろんはっきりと分かる程ではありませんが、場合によっては左右の歯のサイズバランスが取れていないと上下の歯の真ん中のライン(=正中線)がズレることがあります。せっかく矯正治療で噛み合わせも見た目も綺麗になるのであれば正中線も合わせておきたいですよね。そのような時に左右の歯のサイズバランスを整えるためにIPRを行うことがあります。
と、ここまで読んでいくとご自身の正中線がきっと気になってしまいますよね。実は矯正治療前に上下の歯の正中線がぴったり合っている人は少なく、約2mm程ズレていても他人は気にならないという統計も出ているぐらいですので、安心してください。
しかし、先ほどもお話しましたが、せっかく矯正治療をするのであれば正中線は合わせておきたいですので、左右の歯のサイズバランスから正中線がズレている場合にはIPRを行うことがあります。
3) ブラックトライアングルの解消
ブラックトライアングルとは「歯と歯の間の黒い三角形の隙間部分」をさします。
ブラックトライアングルの原因はいくつかありますが、歯冠形態や歯槽骨量の減少による歯肉退縮などが主な要因としてあげられます。
「矯正治療をすることでブラックトライアングルが気になり始めた」という話をよく耳にしますが、それは矯正治療前にはガタガタがあることで目立たなかったところが綺麗な歯並びになることで目立つようになるため、そのように感じることがあります。
そこで矯正治療中ではIPRを行うことでブラックトライアングルの解消をすることができます。
IPRの処置について
歯の表面の硬い組織、エナメル質を一層削り、少しずつ歯のサイズを小さくしていきます。削る量が事前に設定されている専用の器具を使用して行いますので削りすぎるといったこともありませんし、麻酔も必要ありません。
エナメル質の厚さは約1〜2mmあり、IPRで削る量は最大でも1本の歯に対して約0.3mm程度のため、エナメル質の厚さの3分の1以下であり、歯の寿命や健康に問題ない範囲内となっています。また、過去の研究結果よりIPRにより歯が悪くなったり虫歯になったりするという報告はありません。むしろIPRされた歯面の方が再石灰化を引き起こし、虫歯に対して強くなるという報告もあります。
IPRによるブラックトライアングル解消について
ブラックトライアングルとは「歯と歯の間の黒い三角形の隙間部分」をさします
ⅰ)IPRを行うことで歯と歯の間に一層スペースを作ります
ⅱ)歯と歯の間のスペースを閉じるように歯を真ん中に動かします
ⅲ)ブラックトライアングル が目立たなくなります
以上のように不足している隙間を得る目的以外にも、審美的な改善を目的としてIPRを行うこともあります
皆さん、いかがでしょうか?
以上が矯正治療に併用して行われるIPRという処置です
「怖そう」「痛そう」といったイメージを持たれがちな処置ですが、麻酔も必要ないですし、痛みもありません
もちろん、削る量がわずかな量であっても不可逆的な処置になりますので、慎重に必要な時に必要な量だけ行います!
このお話で少しでも皆さんが安心してIPRの処置を受けられる手助けになればと思います。