口腔習癖が及ぼす歯並びへの影響
皆さんは口腔習癖という言葉をご存知ですか?
これは言葉の通りお口の中の癖のことです。
口腔習癖は、ほとんどが不正咬合(正しくない歯並びや咬み合わせ)の原因になります。
または、せっかく矯正治療をしてもこの癖が原因で後戻りしてしまったという方も少なくありません。
今回は口腔習癖についていくつかご紹介します。
代表的な口腔習癖
✅ 指しゃぶり(指をしゃぶる)
・開咬(前歯が噛み合わない) ・上顎前突(出っ歯)
・ 狭窄(歯列弓が狭い) ・正中のズレ(前歯の中心がズレてる)
指をくわえる力によって、上の前歯は前方に押し出され、下の前歯は後方へと押さえつけられます。また、指を強く吸引していると奥歯を外側から内側に押す力が働き、歯ならびの横幅が狭くなり、本来U字型の歯列弓(歯並び)が、V字型になってしまいます。
乳児の間だけの指しゃぶりなら大きな問題はありませんが、3歳以降も続くようですと、このような不正咬合(ふせいこうごう)を起こす可能性が大きくなります。
✅ 爪かみ(爪を咬む)
・上顎前突(出っ歯)・開咬(前歯が噛み合わない)・下顎前突(受け口)
爪は堅い為、爪を噛み続けると前歯の歯根が短くなったり、前歯の先端が減ったりと、成長期の歯や歯茎に負担がかかります。
また前方での咬み癖が起こる場合があり、それによって受け口を促してしまう可能性があります。
✅ 歯ぎしり
・過蓋咬合(噛み合わせた時に上の歯が下の歯に多い被さっていて見えない)
・上顎前突(出っ歯)
・交叉咬合(咬み合わせがすれ違っている)
歯の表面が摩耗することで歯の長さが変わり、噛み合わせがだんだん変化してきます。
✅ 舌突出癖、低位舌(舌で歯をおす)
・上顎前突(出っ歯) ・開咬(前歯が噛み合わない) ・下顎前突(受け口)
・上下顎前突(上下の顎が出ている)
・空隙歯列(すきっ歯)
安静時や、飲み込む時(嚥下時)の舌の位置が正常な場所にないと、舌で歯を押すことになり、不正咬合につながります。
また、低位舌の場合は安静時に舌が下顎の方に落ちている状態をいいます。舌が下がると気道が狭くなり、イビキをかきやすくなったりします。
舌の正しい位置
①舌が上顎に触れている
②舌先が上の前歯の少し後ろに触れている
③舌先が前歯に触れていない
上の図(上顎)の★部分に舌の先端を当てるようにしましょう。
✅ 吸唇癖、咬唇癖(唇を吸い込む・咬む)
・上顎前突(出っ歯)
・下顎劣成長(下顎が小さい)
特に、下唇を吸うことや咬むことが多く見られます。
この場合は上の前歯が唇側に斜めに傾斜したり、下の前歯は舌側に斜めに傾斜してしまう可能性があります。
✅ 口呼吸(口が空いている)
・上顎歯列弓の狭窄 ・上顎前突(出っ歯)
・開咬(前歯が噛み合わない)
アレルギー性鼻炎など鼻で呼吸するのが難しいことで口で呼吸してしまうことが多いです。
口呼吸が習慣になると、口腔内が乾燥する為、細菌が繁殖しやすくなり、口臭がきつくなったり、虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。
習慣的な口呼吸は指導で改善することもありますが、鼻炎など鼻咽頭疾患については、耳鼻科咽喉科での対応も必要になってきます。
✅ 頬杖
・顎変形症 (左右で顔が歪んでいる)
手があたっている部分の歯に力が加わることにより歯が内側に押し込められていきます。また顎のズレがおき、歯並びや顎の変形を促します。
特に成長期、片側に持続的な力が加わると顎が曲がってくる恐れがあります。
一度曲がってしまうと、通常の歯列矯正だけでなく、手術をしないと治らないこともあります。
これらの事をやっていたら必ず不正咬合になるということではありませんが、口腔習癖を無意識でやっている頻度や期間などの兼ね合いで不正咬合の引き金になってしまうことがあります。
しかし、このような癖も適切なトレーニングを行うことで、改善することができます。
当院では、歯列矯正はもちろんですが、口腔習癖もあわせて治していける様に常に細心の注意をはらっております。
何かご不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。